プロダクション・ノート No.1  

撮影を阻んだ戦火の爪痕


『ブラックボード −背負う人−』の撮影は、1999年夏と秋の2回に分けてイラクとの国境に近いクルディスタン地方で行われた。実際の撮影日数は約30日だが、間の準備期間などを含めると、製作期間は4ヶ月以上の月日を費やした。イラン=イラク戦争の傷痕がいまだに残る国境地帯の山道には、いまだに地雷が埋まっている。映画の中には老人たちの集団が地雷を避けながら歩くシーンがあるが、撮影も地元の住民の指示に従い、常に地雷の危険にさらされながら行われた。

200人の老人による前代未聞のモブ・シーン

サミラが最も苦労したのが、老人たちの集団(モブ・シーン)の撮影。撮影には200人を優に超える老人たちが必要とされたが、一つの村にそんな多くの老人がいるはずもなく、また老人がいたとしても映画に出演するのを嫌がる者も多い。そのため、毎朝8台のトラックが老人たちをかき集めるために周辺の村に派遣された。村で結婚式や葬式がある日には老人たちが集まらず、撮影を中止せざるを得ないこともしばしば起こったという。老人たちの大半は映画を見たことがなかったため、サミラはほとんどの場合、自分で演技をして見せなければならなかった。とりわけ、老人たちが川に入るシーンでは、サミラは率先して自ら冷たい川に入り、老人たちの集団を見事に演出した。

実話をもとにリアリティを追求

出演者のほとんどはクルディスタン地方の住人たちだが、その中に唯一プロの俳優として参加したのが、ヒロインのハラレを演じるベヘナーズ・ジャファリ。強烈な印象を与えるこの役のイメージは、サミラがシナハンでクルディスタン地方を旅している時に出会った一人の未亡人−夫を亡くし、精神のバランスを崩した女性−に基づいているという。サミラは撮影前にベヘナーズをこの女性に引き合わせ、演技のヒントを得させた。その結果 、ベヘナーズはこの難役を見事に演じきっている。

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サミラ・マフマルバフ(監督)
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