プロダクション・ノート No.2  

大抜擢された主演俳優

二人の教師を演じる俳優たちのプロフィールも興味深い。ハラレに求婚する教師サイードを演じたサイード・モハマディは、最初はサミラのクルド語のコンサルタントとしてこの映画に参加。役のイメージにぴったりということから、主役に大抜擢された。子供たちを教える教師レブアルを演じたバフマン・ゴバディは、数々の短篇映画祭で受賞経験を持つ若手映画監督。アッバス・キアロスタミの「風が吹くまま」の助監督もつとめている。初の長篇劇映画「酔っぱらった馬の時間」が今年のカンヌ映画祭で最優秀新人監督賞(カメラ・ドール)を受賞。サミラに続くイラン映画界の新星として国際的な注目を集めている。

降板を希望した主要キャスト

ハラレの父親の老人の役は、本来はテヘランから連れてきたベテランのプロの俳優が演じることになっていた。だが、撮影に入るとすぐに、彼の大仰な演技が他のアマチュアの俳優たちの演技と全く相容れないことがわかる。「自分の演技に間違いはない」と主張するベテラン俳優に対し、サミラは一歩もゆずらず、自らの演技論を展開。結局、ベテラン俳優はみずから降板を申し出、父親役は地元のアマチュアの老人に変更された。この間の緊張感あふれる駆け引きは、サミラの弟メイサムが監督したメイキング映像に残されている。

完成への険しい道のり

当初は約40分の中篇映画として企画されたこの『ブラックボード −背負う人−』だったが、夏の撮影を終えた時点でサミラの構想は更なる広がりを見せ、秋に追加撮影を行って長篇劇映画として完成させることになった。問題は予定より高騰した製作費。サミラの父で、この映画のプロデューサーであるモフセン・マフマルバフは、旧知のロカルノ映画祭ディレクター、マルコ・ミューラーと、東京国際映画祭シネマ・プリズム部門のディレクターで、オフィス北野傘下の製作会社ティー・マークのプロデューサーでもある市山尚三氏に支援を依頼。撮影済のラッシュを見た二人を通 じ、マルコ・ミューラーが顧問をつとめるイタリアの製作会社ファブリカと北野武作品を手がけたオフィス北野が製作費の一部を出資することが決定し、『ブラックボード −背負う人−』は無事に完成にこぎつけた。

イランからイタリア、そして日本へ

ファブリカは、アート映画への支援を目的に、ベネトンの資金によって1998年に創設された映画製作会社。『ブラックボード −背負う人−』を含めて既に6本の作品を製作し、それらは全てカンヌ、ヴェネチア、ベルリンといった一流の国際映画祭に出品されている。一方、北野作品を成功させてきたオフィス北野は、1999年に創設された関連会社ティー・マークを通 してアジアの若手監督をサポートするプロジェクトを開始。『ブラックボード −背負う人−』に次いで製作した中国映画「プラットホーム」は2000年ヴェネチア映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞している。この『ブラックボード −背負う人−』は、サミラ・マフマル バフという才能ある若手映画作家を媒介にして、同様のビジョンを持つヨーロッパとアジアの製作会社が共同製作を行った例として、国際共同製作のフィールドでも大きな注目を集めている。

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